第百三十七章 ♪


【次元】 六次元
【空】  ブラックシャークマークⅡ
【人】  ノロ イリ ホーリー サーチ ミリン ケンタ 住職 リンメイ 四貫目 お松
     瞬示 真美 広大 最長 Rv26 総括大臣 セブンヘブン


* * *


 超巨大ブラックホールの出口付近の時空間でレインボー戦艦とブラックシャークマークⅡ が漂っている。お互いすべての砲門が使いものにならない。折れたり曲がったり情けない姿になっている。まるでパンチを繰り出し合って血まみれになったボクサーがリングの上で辛うじてにらみ合っているような状態だ。


 突然マークⅡ の天井のスピーカーから美しくも悲しい音楽が流れる。


「何というメロディーだ」


 まずR v 2 6 が素直に感動する。そのときセブンヘブンから信じられない通信が入る。


「私はセブンヘブン。ノロは無事か」


 驚いたノロがマイクを探す。しかし、応じたのはR v 2 6 だった。


「ワタシは三次元のアンドロイドのR v 2 6 です。素晴らしい音楽、ありがとうございます」


「三次元の世界ではアンドロイドも音楽に感動するのか」

 

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「そう言われれば、そうですね。今ノロはマイクを探しています。しばらくお待ちください」


「何と! 三次元の生命体は素早いと聞いていたが、すぐ応答できないのか」


「ノロは特別です。鋭くて鈍いのです」


 やっとノロがしゃべり出す。


「お互い無駄な戦いをしたなあ」


「そのようだ」


「どっちもノックダウンだ」


「はははっ」


 セブンヘブンが屈託なしに笑うと巨大土偶が現れる。急にセブンヘブンの声が変わる。


「もはやこれまでか。死ぬ前にノロの顔を見たいと思っていたが… … 」


ノロが次元浮遊透過スクリーンを確認すると瞬示・真美が会話に参加する。

 

「心配しないでください。巨大土偶は攻撃しないはず」


「どういうことだ」


 瞬示・真美が笑いながら応える。


「この音楽を聴くために集まってきたのです」


「まさか! それが本当ならありがたい」


 セブンヘブンは一呼吸置くと続ける。

 

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「もう武器がないからどうしようかと思った。さてここまで来たら、是非ノロに会いたい」


 セブンヘブンが冷静さを取り戻すとイリが明るく応じる。


「ノロの顔を見たいのなら巨大土偶の顔を見ればいいわ」


「どういうことだ」


「よく似ているの」


 セブンヘブンがレインボー透過スクリーンで巨大土偶を確認する。


「そうすると男前じゃないか」


「えっ! 今なんて言いました? 」


 セブンヘブンはイリの疑問に答えずに選曲する。


「さて次の曲はどうかな? 」


 今度は明るく溌剌とした曲だ。宇宙空間で巨大土偶がその曲に合わすように踊り出す。するとR v 2 6 も器用に踊り出す。イリがノロの手を取って踊り出すとノロが叫ぶ。


「これだ! 」


 ホーリーもサーチと一緒にステップを踏む。ケンタがミリンを抱きながら踊る。


「リンメイ! 」


 住職も負けじとリンメイとダンスをする。四貫目とお松までが不思議な舞を披露する。人間の海賊が参加するとアンドロイドの海賊がR v 2 6 の周りで踊り出す。

 

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「セブンヘブン! こっちへ来いよ」


「おう! 楽団を引き連れてもいいか」


「何人でも連れてこい! 」


* * *


「イマイチ姿がはっきりしないな」


 すると瞬示・真美が現れると初対面なのを無視して明るく告げる。


「セブンヘブン。次元落ちして六次元の生命体になったんだろう? 」


「そうだ」


「だったら三次元化すれば。こういう風に」


 瞬示・真美が瞬示と真美に分離する。すぐにセブンヘブンが応じる。


「こうか? 」


 セブンヘブンがセブンとヘブンに分離すると大きなどよめきが起こる。背が低く、口が大きく…… まるでノロそっくりなのだ。ノロが躊躇するイリの手を引いてセブンとヘブンに近づくと最大の賛辞を送る。


「ふたりとも滅茶苦茶男前じゃないか」


 ノロの言葉に気をよくしたセブンとヘブンが大声を上げる。

 

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「おい! 楽団員も三次元化しろ」


「楽器はどうするのですか? 」


「何とかしろ」


 意外にもセブンとヘブンはユーモアに長けている。音楽が止まったのでブラックシャークマークⅡ の近くで巨大土偶が騒ぎ出す。


「巨大土偶のブーイングが始まった。殺されるぞ」


 このセブンの言葉で三次元化した楽団員が楽器を手にすると中央コンピュータが次元浮遊透過スクリーンに楽譜を投影する。


「この楽譜は六次元の世界の楽譜だ! 我々の音楽が理解できるのか? 」


 楽団員が驚くと中央コンピュータが否定する。


「これは三次元の世界の楽譜です」


「なんと! 音楽は共通なのか」


 これにはノロも驚く。


「次元が違っても共通なのは数学だけかと思っていた」


 楽団員が器用に演奏を始めるとノロとセブンが、イリとヘブンががっちりと握手する。


「次元波でこの音楽を外にも流せ! 」


 すると巨大土偶が再び踊り出す。R v 2 6 も新しいメロディーに引きずり込まれてアンドロイドの海賊共々踊り出す。

 

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「改めて自己紹介する」


「オレは数学者のノロ」


「私たちは音楽家のセブンとヘブン」


 イリが自己紹介するのを無視してノロが適当な歌詞をつけて歌い出す。極度の音痴の声にイリがノロの口を押さえようとするがセブンは感動する。


「何という美声! 」


 一方、楽団員はノロの音程に合わせて器用に演奏を続ける。申し訳そうなイリにヘブンが告げる。


「音楽がレインボー戦艦の主砲に組み込まれていたら、戦争など起こらなかったな」


「いいえ。音楽で戦いを挑まれたらブラックシャークマークⅡ は完敗だわ」


 ノロの美声( 超音痴だがセブンやヘブンには美声に聞こえる) に驚いたヘブンが横に首を大きく振ってイリに近づく。


「完敗するのはやはり私たち七次元の生命体だ」


 イリもノロから離れてヘブンに近づく。


「いずれにしても武器の選択を誤ったのね! 」


 R v 2 6 、ホーリー、サーチ、ミリン、ケンタ、住職、リンメイ、四貫目、お松、宇宙海賊、瞬示、真美、楽団員たちが大笑いするとノロが歌うのをやめる。

 

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「いやあ。腹の底から歌うと気持ちがいいな」


 そこに広大・最長とともに総括大臣が現れる。


「和解したのか? 」


「そうです」


 セブンをノロと間違えて総括大臣が握手を求める。


「ノロ! 感謝している。本当にありがとう」


 セブンは総括大臣の手を握ると否定する。


「私はノロではない」


 そしてもう一方の手でノロを指し示す。


「瓜二つだ! 」


 総括大臣が驚くとイリがセブンに尋ねる。


「何故、ノロと全く同じ姿で三次元化したのか教えてください」


「えっ! 」


 セブンとヘブンがノロとお互いの姿を見て首を傾げる。


「そう言われればそっくりだな」


「私の周りはノロだらけなんです。これ以上ノロが増えるのは困るんです」

 

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 やはりノロの姿をした中央コンピュータの端末がイリに近づく。


「ノロの姿を捨ててパンダに変身してもいいでしょうか」


「ひとり減ってもふたり増えたんじゃ、どうしようもないわ」

 

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