第四十三章 ノイズ


【時】永久0274年
【空】大統領府
【人】瞬示 真美 ホーリー サーチ ミリン ケンタ ミト キャミ カーン
   五郎 住職 リンメイ 一太郎 花子 忍者 Rv26


***


 瞬示と真美がRv26とともに大統領の執務室に現れたという報告を受けてキャミは再び大統領として、そしてミトは司令官として新婚旅行先から急きょ時空間移動装置で大統領府に戻る。部屋にはキャミ、ミト、カーン、五郎と瞬示と真美とRv26がいる。


「カーン!私は反対です」


「しかし、いずれ巨大コンピュータは何か仕掛けてくるはずだ」


「それと生命永遠保持手術とは次元が違います」


「かつては生命永遠保持手術の第一人者といわれた大統領が、なぜその手術を否定することに固執するのだ」


「いいですか、カーン。永遠の命と巨大土偶との奇妙な因果を感じませんか?あるいは永遠の命と時間島との奇妙な因果を」

 

[394]

 


「確かに巨大土偶は永遠の命を持つ者を殺そうとしたし、時間島は我々から永遠の命を取りあげた。しかし、それを因果だと言われても、わしにはよくわからん」


 再び大統領職に復帰したキャミはこの数日間の議論についてすべて報告を受けていた。


「忍者は生命永遠保持手術の効果を保持したままだ。因果関係があるというなら巨大土偶や時間島が忍者の前に現れるはずだが、そんなことは起こっていない」


「それは数が少ないからでしょう。しかし、カーンの言うとおり生命永遠保持手術を受けた方がいいのかもしれない」


 ミトがカーンの意見を受けいれるとキャミが意外な表情をしてミトを見つめる。


「生命永遠保持手術の設備はRv26の宇宙戦艦にしかありません。サーチ、リンメイはもちろんのこと大統領にも手術の現場に戻っていただいたとしても、生命永遠保持手術を受けられる人数はしれています」


「わかりました。とにかく前線第四コロニーを攻撃する方法を考えましょう」


 キャミが納得したのを見てカーンが苦笑いして話題を変える。


「新婚旅行はどうでしたか」


 今度はキャミとミトが苦笑する。


「ふたりだけで二十四時間会議をしているようなものでしたわ」

 

[395]

 

 

 キャミの言葉を受けてミトが両手を軽く広げる。


「Rv26、生命永遠保持手術の設備はあるのか」


 ミトが新婚旅行の話を避けようとRv26に確認する。


「ワタシの宇宙戦艦にその設備はあります」


 ミトがうなずくとカーンに視線を移す。


「宇宙戦艦で生命永遠保持手術を受けて前線第四コロニーを攻撃する。手短く言うとカーンの作戦はこうですね」


 つかの間ではあったが、キャミとゆったりとした時間をすごせたためか、ミトに鋭さが戻ってきた。


「前線第四コロニーに張りめぐらされた時空間バリアーをくぐり抜けて巨大コンピュータを破壊するというのは五〇隻の宇宙戦艦をもってしても不可能に近いわ。時空間移動装置も時空間バリアーを突破できないし」


「仮に、バリアーを突破しても巨大コンピュータは時間島をコントロールできます」


ミトはキャミではなく、いっさい発言しない瞬示と真美を見つめて言葉を続ける。


「前線第四コロニーが時間島に包まれでもすれば、生命永遠保持手術の効果は再び消滅して、とても白兵戦などできる状態ではなくなります」


 議論が時間島のことになったところで瞬示と真美の意見を求める環境が整う。キャミがふたりにずばりたずねる。

 

[396]

 

 

「瞬示と真美がもし巨大コンピュータと戦えばどうなるの」


「太陽系どころかこの宇宙が消滅するかもしれません」


「時間島は宇宙そのものです。時間島同士がはげしくぶつかりあうかもしれないわ」


 ふたりが交互に説明する。キャミがそんなふたりをまじまじと見つめなおす。


「今、私は宇宙と話をしているのね」


 瞬示と真美という人間の格好をした宇宙がキャミの目の前にいる。


「巨大コンピュータも、もはや単なる演算装置の集合体ではなく宇宙なのかしら」


 キャミの言葉にカーンがうつろな眼差しをしてやけくそになる。


「それなら、さっさと人間を時間島で地球からどこでもいいから運びさってしまえばいいものを」


「そうできない理由があるのかしら」


***

「アンドロイドが感情を持ちはじめたわ」


 みんなの会話が途切れたところで真美の断定した言葉に続いて瞬示がRv26を見つめながら、だめを押す。


「意思はもちろんですが、感情を明確に持ちはじめたのは中央コンピュータや巨大コンピュータよりもアンドロイドです」

 

[397]

 


 カーンもRv26を見つめる。

 

「アンドロイドが?Rv26はかなり旧式だぞ」


「彼のCPUは最新型のものに変更されています」


 このミトの言葉にRv26がうなずくと瞬示が反応する。


「CPUより、経験です」


「経験?」


 ミトが瞬示に身をのりだす。


「言語処理プログラムをインストールされてから人間に二十年近く接しているのはRv26やRv26と行動をともにした宇宙戦艦のアンドロイドと中央コンピュータです」


「アンドロイドとうまくやっていかなければならないな。特にRv26とは」


 ミトが力をこめて言うと、真美がほほえみながらミトを見つめる。


「ミトはアンドロイドと十分に親しいわ」


「どういうことですか」


 ミトが首をひねる。瞬示もミトに笑いかける。


「前回の作戦が成功したのは、ミトがアンドロイドに心を開いたからだ」


「からかわないでくれ」

 

[398]

 

 

「瞬示さんと真美さんの言うとおりです」


 Rv26がミトに頭を下げる。キャミはすでにふたりに向かって大きくうなずいて、机の上のインターホンのスイッチを押す。


「ホーリー、サーチにここに来るように伝えなさい」


「人間だけではなく、アンドロイドにもこれまでの経緯をすべて公表します。混乱の責任は私が取ります。いいえ、私が矢面に立ちます」


 ミトがすぐさまキャミに同調する。キャミは姉が弟をさとすようにミトを見つめる。


「瞬示と真美の言うとおり、あなたはアンドロイドに一番近い人間なのよ」


 キャミの言葉にカーンが大股でミトに近づく。


「ミト、まだわからんのか?ミトの気持ちが勝利に導いたのだ」


 ミトはカーンの言葉を何とか理解するが納得しない。


「意識してやったわけではない」


「意識せずにしたからこそ価値があったのじゃ」


 住職がダメを押すが、キャミはもういいという表情をして決意を押しだす。


「何としても人間の意志をまとめあげなければ。幸い、私たちは無言通信が使えるわ」


 瞬示と真美はキャミとミトが考えていることが少し食い違っていることに気が付く。ただ、人間はもちろんのこと、意思を持ち、感情を持ちはじめたアンドロイドもいっしょになって巨大コンピュータに立ち向かおうとキャミとミトの心がひとつになっていることも確かだ。

 

[399]

 

 

しかも武器ではなく強い意志を土台にした感情をこめた言葉で戦おうと考えている。真美は大きな波が自分を持ちあげているような気分になる。瞬示も高揚する気持ちを押さえきれないが、一方で不安が頭をよぎる。瞬示がキャミに確認する。


「一太郎は巨大コンピュータからのノイズを遮断するプログラムを完成させたのですか?」


 この言葉が終わるか終わらないうちに、キャミが急に頭をかきむしるようにして倒れる。


【巨大コンピュータがノイズを流した!】


 ミトもカーンも五郎も頭を抱えながら倒れる。キャミに呼びだされたホーリーがドアを乱暴に開けて部屋の中に倒れこむ。廊下ではサーチが倒れている。


【瞬ちゃん!】


 真美が顔をゆがめる。もちろん瞬示も強烈な頭痛を感じるが倒れこむほどではない。ふたりはこの異常事態になすすべもなくキャミを抱きかかえてソファーに運ぶ。キャミが苦しそうに頭を抱えこむ。v26は何が起こったのか理解できずに立ちつくしたあと部屋から出ていく。


 瞬示が最も恐れていたことが目の前で起こる。巨大コンピュータが無言通信を利用して人間に強烈なノイズを流し続けている。恐らく頭の中を割れんばかりの轟音が響いているに違いない。


 

[400]

 

 

 瞬示と真美の身体が緑色に輝くと大統領執務室から消えて、前線第四コロニーの巨大コンピュータがいるはずの部屋に現れる。目の前は真っ暗で何も見えない。巨大コンピュータが真っ黒なのではない。何もないのだ。


【ノイズは?】
【ここはコンピュータルームじゃない!。星が見えるわ】
【いや、間違いなくここは巨大コンピュータがいたところだ。巨大コンピュータがどこかへ移動したんだ】


 目が慣れてきてもふたりには何も見えない。


【とにかくノイズの発信源を探すんだ】
【でも、ノイズは消えているわ】
【上空に移動しよう】


 ふたりの身体がわずかに緑色に輝く。しかし、輝きはすぐに消えてしまう。


【移動できない!】
【変だわ】


 ふたりの身体の輝きが消える。真美の手首がわずかに輝く。


【瞬ちゃん!わたしたち一日ずれて移動しているわ】


 真美が瞬示に腕時計を差し出す。しかし、瞬示には真美の腕時計の見方がよくわからない。


【どちらにずれているんだ?】

 

[401]

 

 

【未来に】
【それでノイズが消えたのか。少なくとも一日先の世界ではノイズが存在していないということか】
【なぜかしら。空間移動しただけなのに、時空間移動してしまっている】
【ノイズのせいか】
【一日前に戻らなければ】


 ふたりは神経を集中するが何の変化も起こらない。


【時間島をコントロールできない】
【瞬ちゃん!あれは】
 上空に鮫かシャチのようにも見える黒いものが見える。そのとき、突然ふたりの目の前が明るくなる。

赤い炎がぎらぎら燃えている。


【なんだろう】


 瞬示がひるむ。ふたりの前には怪しい赤い光を放つ火炎土器が空中に浮いている。


【瞬ちゃん!】

【マミ!】


 ふたりの身体がどんどん小さくなって火炎土器に吸いこまれてしまう。


***

 

[402]

 

 

 一太郎と花子と忍者が大統領府に向かう。そのあとをケンタとミリンが住職とリンメイをかばうようについていく。全員に一太郎と花子が開発したノイズ遮断プログラムがすでにインストールされている。


「わしらにかまわず、先に行ってくれ」


 住職がせきこみながら怒鳴る。


「わかりました」


 ケンタとミリンは全力で走りだすと前方で立ち止まっている一太郎たちを見つける。


「どうした?急がないと」


 ケンタが一太郎の背中に向かって叫ぶ。忍者は全員電磁レーザー忍剣を構えている。その先にはエアカーが止まっている。そのエアカーからRv26が降りてくる。


「これに乗ってください」


 Rv26が手招きする。


「安心してください。ワタシは味方です」


 一太郎が躊躇する。忍者は構えを崩さない。


「ありがとう!」


 明るい声をかけたのはミリンだった。跳ねあがったエアカーのドアからミリンが乗りこむと強引にケンタを引きずりこむ。Rv26が一太郎たちがやってきた方向を指し示す。もう一台

 

[403]

 

 

エアカーが近づいてくる。そのエアカーの窓に住職とリンメイの上半身が見える。


「分乗してください」


 Rv26の声に一太郎と花子と四貫目とお松がエアカーに乗りこむ。残りの忍者が住職とリンメイが乗っているエアカーに乗りこむ。


「大統領府に急ぎましょう」


Rv26が運転席に座る。


「シートベルトを!」


 エアカーが浮きあがると一直線に大統領府に向かう。大統領府のセキュリティシステムはまったく反応しない。エアカーを大統領執務室の窓に横付けするとRv26が飛びだし、窓ガラスに体当たりして中に入る。そして窓から手を差しのべて一太郎から順番に部屋の中に招きいれる。忍者は跳躍して部屋に飛びこむ。


一太郎がパームコンピュータのコードをキャミの髪の毛をかき分けて無言通信チップの端子につなぐと、ノイズ遮断プログラムをインストールする。花子もミトに、お松がドア付近で倒れているホーリーにインストール作業を開始する。忍者もインストール作業を手伝う。


 やがてキャミ、ミト、カーンが頭から手を離す。


「頭が割れそうだったわ」


 Rv26が一太郎の方に向いて手を差し出す。

 

[404]

 

 

「そのパームコンピュータを一台貸してください。その中のプログラムをインターネットで配信します」


 一太郎が残念そうに首を横に振る。


「このノイズ遮断プログラムをインターネットに配信しても強力なノイズの引き起こす頭痛で、とても自力でインストールする余力が人間には残っていない。ひとりずつインストールするしかない」


「わかりました。それなら、まず、インターネットですべてのアンドロイドにそのプログラムを送信して、アンドロイド一人ひとりが人間にインストールしていきましょう」


「なるほど」


 一太郎がパームコンピュータをRv26に手渡す。Rv26の左肩からケーブルが伸びてパームコンピュータの端子につながると両耳が赤く点滅する。そして無線でアンドロイドに宇宙戦艦で地球上のすべての人間にノイズ遮断プログラムをインストールするように命令する。


「お父さん、お母さん」


 ミリンがホーリーとサーチにかけよる。


「大丈夫だ」


 ホーリーがミリンを抱きしめる。キャミは乱れた髪の毛を整えるとコンピュータを操作するミトに近づく。

 

[405]

 

 

「アンドロイドの力を借りても、すべての人間にインストールするのに最低五日はかかる」


 ミトの言葉がガラスのない窓から侵入してくる重低音に押されて聞きとれなくなる。五〇隻近い宇宙戦艦が発進する音が残った窓ガラスに共鳴する。


「何て言ったの?ミト」


「手分けしてインストールしていたのでは間に合わない!」


 ミトの言葉にキャミが悲痛な表情を浮かべる。追い打ちをかけるように卓上のスピーカーから、地球連邦軍司令部のアンドロイドの報告が流れる。


「大統領!ノイズでショック死する者が続出しています」


***

「とても、人海戦術では間に合わない」


ミトが窓に近づいて港を見ると宇宙戦艦が一隻だけ残っている。


「あれはワタシが艦長を務める戦艦です」


「どう思う、Rv26」


 ミトはすでにRv26を全面的に信頼している。


「ミト司令官のおっしゃるとおりインストールには五日はかかります」


「アンドロイドがいくら頑張ってくれたとしても助かる人間の数はしれている。ノイズの元を断たなければ人類は壊滅的な被害を受ける」

 

[406]

 

 

「降伏すれば、ノイズは停止するはずです」


「降伏なんかできない」


「インストール作業を中止してすべての宇宙戦艦を動員して前線第四コロニーの巨大コンピュータに戦いを挑んでも負ければ人類は滅亡してしまう。それに五〇隻ほどの宇宙戦艦で攻撃を仕掛けても勝つチャンスはわずかです」


 Rv26の意見にミトが肩を落とす。それまで黙っていたキャミがRv26に近づくと真正面に立って見上げる。


「Rv26の戦艦では生命永遠保持手術ができると聞きましたが、本当ですか」


「生命永遠保持手術が可能な宇宙戦艦はワタシの戦艦のみです」


「あの宇宙戦艦を動かせる最低の人数のアンドロイドに戦艦に戻るように指示しなさい」


 Rv26が驚いてキャミを直視する。同じく驚くミトがキャミに問いかける。


「どうするのですか」


「前線第四コロニーに行きます」


 ミトではなくRv26がすぐさま反対する。


「無謀です」


「命令です」


「わかりました」

 

[407]

 

 

 Rv26が耳元を赤く輝かせると瞬示と真美の言葉を思い出す。


――やってみなければわからない
――人間はあきらめないわ


「ミトと行きます。カーン、大統領に任命します。あとの人選は任せます」


「キャミ、いや、大統領、Rv26の言うとおり無謀だ」


 カーンがキャミの前に進みでる。


「大統領は残ってくれ。わしが行く」


 カーンがキャミの手を取って大統領の椅子に連れ戻そうとする。


「ミトも残れ!」


 カーンの顔が真っ赤になる。脳裏からキャミと真っ向から戦っていたころの記憶がまったく消え失せるどころか、カーンは人類を守るために進んで犠牲になってもいいと興奮する。キャミもまるで長年の戦友のようにカーンを正面から見つめる。


「ふたりがいなければ人類は誰を頼りにして生きていくのか、よく考えろ」


「そのとおりだ」


 ホーリーがカーンに同調する。サーチがいやな予感を抱いてホーリーを見つめる。


「ミトの代わりに俺が行く」


 ホーリーが一歩前に出る。

 

[408]

 

 

「私も行く」


「サーチは残るんだ」


「わし、ひとりでいい」


 カーンがひときわ大きな声を出す。


「だめです。ひとりでは孤独が判断を狂わせます。それに俺には前回ミトとともにやつらと戦った経験がある」


 ホーリーがカーンをいさめる。キャミはカーンの手を振りほどいて机の上に両手をついて身体を支えながら唇をかむ。その唇から血がしたたり落ちる。そして両腕を少し浮かせると力一杯机をたたく。机の上の血が飛び散る。


「カーン、ホーリー、Rv26とともに宇宙戦艦で前線第四コロニー攻撃を命じます。すぐ準備にかかりなさい!」


 ミトは何も言わずに直立不動の姿勢を取ると、キャミが一番重いものを背負ったと感じる。しかも同じものを自分もいっしょに背負ったとはっきり自覚する。


カーンとホーリーがキャミに敬礼したときミリンが声をあげて泣きだす。涙を流しながらキャミをにらみつけるミリンをサーチが抱きしめてホーリーを見つめる。


「宇宙戦艦で生命永遠保持手術を受けるのでしょ。それなら私が必要になるわ」


 サーチがかすかな期待を持つ。

 

[409]

 

 

「いいえ、ワタシが手術をします」


 Rv26の冷ややかな声がする。


「えー、アンドロイドに手術ができるの!」


「宇宙戦艦の生命永遠保持手術の設備はワタシが制作しました。それにあのときサーチさんやリンメイさんから手術の仕方を学習しました」


 サーチはジャストウエーブ社の上空に浮かぶ宇宙戦艦で生命永遠保持手術をしたことを思い出す。キャミはうなだれたサーチを見つめるとガラスのない窓の横にいるRv26に近づく。


「Rv26、あなたにすべてを任せるわ」


 そして、キャミは背中で命令を確認する。


「すぐに出航しなさい。最後の最後まであきらめません。すべての責任は私が取ります。それに……無駄死には絶対に許しません」


「わかりました」


 ホーリーがその窓の外のエアカーに乗りこもうとキャミの横を通りぬける。キャミが泣いているのがわかる。キャミはホーリーの視線から涙を隠すように敬礼する。


「俺はどんなことがあっても約束は守る。必ず戻ってくる」


 ホーリーが極力明るい声を出すとサーチにぎこちなくほほえんでみせる。サーチも何とか満面の笑みを返してとりあえず合格点をホーリーに与える。

 

[410]

 

 

 ホーリーがエアカーに飛び乗る。そしてカーンが続く。最後にRv26が飛び乗ったときエアカーが少し沈む。すぐに音もなくエアカーは上昇して銀色に輝く宇宙戦艦に向かって速度をあげる。


「おとーさーん」


 ミリンの鈴が鳴るような悲しい声がホーリーの耳にいつまでも残る。

 

[411]

 

 

[412]